紀元前1000年まで遡れば、先コロンブス期のナスカ文明における首飾りに、既に羽根が使われていました。それ以降も羽根は、マハラジャのターバンを飾るエイグレットや、19世紀ヨーロッパで高貴な人々が着用したティアラに用いられていきます。貝殻、角(つの)、サメ革など、動物たちの物語を伝える断片も、古くからジュエリーと自然界を結び付けています。
ムガル帝国から日本、中国、西洋に至るまで、ハイジュエリー職人の仕事は、動物を特定し、つぶさに描写するという点で、生物学者にも似たものとなっていました。ジュエリーに命を吹き込むためには、熟練した職人技のみならず、緻密な観察が必要とされたのです。フランスの金細工・宝飾職人リュシアン・ガイヤール(1861~1942年)の作品は、そのことを物語っています。アールヌーヴォーの宝飾芸術で名を馳せた彼は、昆虫学に情熱を注ぎました。実際にガイヤールが創り出した昆虫たちは、ジュエリーの素材に関する慣習を打ち破るものです。
野生生物であれ愛玩動物であれ、無限のインスピレーションを与えてくれる動物たちは、バイオミミクリー(生物模倣)とも言える美しいつながりを私たちに見せてくれます。クジャクの青みを帯びた体毛と羽根の目玉模様、カワセミの色鮮やかな羽毛など、その他さまざまな鳥の特徴は、まさにその例です。
2023年3月16日、あなたの中にもある動物たちの不思議を見つけてみましょう!
カロリーヌ・ベンザリア(美術史家、美術批評家、ジャーナリスト)、イネジータ・ゲイ=エッケル(ジュエリー史家、ジュエリーと宝飾芸術の学校「レコール」教授)と共にお届けします。
トークスケジュール・言語
3月16日(木)午後8時(日本時間)
英語(日本語、広東語、北京語の同時通訳付き)
講師
カロリーヌ・ベンザリア
美術史家、美術批評家、ジャーナリスト
イネジータ・ゲイ=エッケル
ジュエリー史家、レコール教員
Van Cleef & Arpels, Pegasus Clip, rose gold, white gold, purple sapphires, rubies, coral, diamonds, 2016, "Noah's Ark" Collection, © Van Cleef & Arpels