ダニエル・ブラッシュの作品の特徴として、ジュエリーや彫刻の連作をひとつのアートインスタレーションとして創作するというコンセプトが挙げられますが、連作「モネについて考える」においてこれは特に完璧に表れています。アーティストとして、ブラッシュはつねにフランス印象派の画家が用いる色彩、とりわけモネの淡いピンク、セルリアンブルー、カドミウムイエローといった光を取り入れた色相につねに興味をそそられていました。いつもと同じく、自身の興味の対象について深く調査・研究する必要を感じたブラッシュは、妻のオリヴィアとともにヨーロッパに赴き、このきわめて特殊な色遣いを理解することに焦点を当てて旅を重ねます。
やがて回折格子の科学的原理にインスピレーションを受けたブラッシュは、ミニチュアサイズの、手彫りによる一連の彫刻作品の制作を始めました。「陶芸家が何時間もかけて焼成した楽焼の窯を開けるとき、初めて色や釉薬を見るのと同じ。私は彫り方を知っているし、角度が仕上がりに影響することも理解しているが、最初のうちは、私が取り組んでいる彫刻が青や赤や紫の光を発するかどうかはわからない。いつも驚かされる」。
ダニエルの親族であるオリヴィアとシーラ、そしてヴィヴィアン・ベッカーによるこのトークでは、ダニエル・ブラッシュの日本への憧憬と、彼の中にモネへのオマージュが醸成され、それが形になる上で日本が果たした役割について、明らかにされます。