
武道から木版画、詩句から食文化にいたるまで、日本文化は、世界規模での新たな美意識の台頭に大いなる影響を与えてきました。特に写実的で装飾性に富んだ工芸の分野では、はるか昔から土地ごとに根ざした工芸師たちが、洗練された金属細工をはじめとする多彩な芸術表現を探求してきました。
金を加えた銅合金である赤銅は、西洋では「red copper(レッドコッパー)」の名を持ち、化学溶液での処理によって表面が黒く変化する独特の性質で知られています。高価な金を含有していることから、この合金は主に小さな品々を制作するのに用いられていました。特に侍の刀に取り付ける鍔(つば)、柄頭(つかがしら)、鞘(さや)などの金具に重用され、高い評価を得ました。
1876年、明治時代の日本で廃刀令が施行されると、侍や剣士たちは新たな職業に転身せざるを得なくなります。刀に用いられたこれらの金具も、一晩にして過去のものになってしまいました。西欧への輸出市場にアピールするために、多くの人々が赤銅の小物をジュエリーへと創造的に作り変えていきます。こうした作品に描かれたさまざまな場面は、急速に変化する世界の中で日本の豊かな伝統と文化をとらえ、変遷の様子を反映しています。
この対談では、日本の武士や武将という歴史的な社会と洗練を追求する西欧のコレクターたちという、二極の世界を行き来する旅へ皆さまを誘います。何世代もにわたりデザイナーにとってインスピレーションの源であり続けてきた、工芸とジュエリー文化の交差に焦点を当てるものです。
トークスケジュール・言語
英語セッション
(日本語、フランス語、広東語、北京語の同時通訳付き)
1月16日(木)午後8時(日本時間)
英語セッション
1月17日(金)午前10時(日本時間)
講師
ロール・レボー
アジア・ヨーロッパ芸術専門の美術史家、キュレーター
マチルド・ロンドゥアン
美術史家、ジュエリーと宝飾芸術の学校〈レコール〉講師
睡蓮の池の蛙を描いたブローチ
日本、1800年代後期
金銀のメッキを施した赤銅
個人蔵
写真:ジュエリーと宝飾芸術の学校〈レコール〉/ベンジャミン・チェリー